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[コメント] Wの悲劇(1984/日)

構造的アイドル映画をそのまま「女優の成長物語」にシフトさせ、ピッタリはめ込んでしまったパッケージと演出、カリカチュアライズの大成功。そもそも「Wの悲劇」の映画化でもなんでもないという、土台から屋根まで徹底的に作り込んでいったことが面白さに。
かける

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







こんなにマンガチックな映画もない、って言い方はできます。

それこそ、三田佳子の「私、女優よ!」にしても、高木美保の「イジワル女」、世良正則のなんともVシネっぽい演技……そして、世界の蜷川幸雄のコワもて演出家などなど、キャスティングだけではなく、言い出したらキリがないくらい。

でも、この映画はとにかく薬師丸ひろ子なんです。

それまで、『戦国自衛隊』を筆頭に、角川映画的人寄せパンダに使い続けられて、『探偵物語』ですこしは女優扱いしてもらえたと思ったら『里見八犬伝』では一転、アイドル映画のためのアイドルとしてまたパンダにさせられてしまった(しかもあんな中途半端なラブ・シーンまで使って!) 『メインテーマ』でも角川的男パンダ・野村宏伸につき合わされてドンガラガッシャ〜ンとまた地の底まで落っことされてしまう。角川的拡大生産・大量消費が本当に恐ろしいのはそのへんです。

その次に、彼女自身の成長とシンクロするような形のこの映画に(この演出で)出演できたことが、彼女にとってどれだけの幸せだったか……なんてことをファンは勝手に思ったりしていたわけです。

記者会見に臨む静香(薬師丸ひろ子)。彼女の心臓のドキドキ、そして自分でキューを出し……スクリーンに前のめりになって観ていた観客は、自分のことのようにハラハラしながら彼女を見つめ、そして「女優・静香(ひろ子)」の演技、涙にドーンと突き放されてしまう。

今や、誰でもない、彼女こそが「女優」なんだと。

最後の場面、静香が昭夫(世良正則)にレベランスをするシーン。永遠の別れを告げられているのは昭夫であり、そして観客でもあったわけです。

そうして、この映画が、薬師丸ひろ子による「薬師丸ひろ子映画」としての代表作になりました。

そして……今に至るまで彼女の浮上はないと言ってもいいでしょう(もちろん結婚から離婚までの様々なスキャンダルも足を引っ張ったにしても)

セーラー服と機関銃』のヘソチラをリアルタイムで経験した世代にとって、この映画を再見すると色々、色々と考えてしまうことがあるのは、そんなことや、あんなことのせいです。

だって……彼女は本当にかわいかったから。

そんな、遠い目をさせてくれる映画です。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)irodori 直人[*] ぱーこ[*] けにろん[*]

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