[コメント] 丹下左膳餘話 百萬両の壷(1935/日)
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や っ ぱ り 間 違 い な か っ た !
古い作品というだけでどうも敷居が高いというか、見るのに結構勇気がいるというか、とにかく古い作品というものは敬遠してしまいがちですが、やっぱりこの作品は観た方がいいと思う。ちゃーんと映画を分かってらっしゃる人から、ライトマニア、ビギナーまで、老若男女、幅広い層が楽しめる貴重な作品だと思いました。
まず、柳生家の次男とその嫁がユルすぎて笑える。売ってしまったこけ猿の壷が百萬両だと分かったら、もっとうろたえろよ、と。何をのらりくらりと日々過ごしているんだよ、と。そんなユルさが面白い。あまりに脱力感漂う夫婦に「百萬両てそもそも一体どれくらいの価値?」って思わず調べてしまった私。(調べた結果、とんでもなくすごい価値という事が分かりました。)←調べなくても分かるだろ
それから丹下左膳を知らない私でも、彼が画面に映った途端、出た!丹下左膳!と思える凄さ。なんだあの存在感は!矢場の奥に寝転がるその姿は恐ろしいくらいの存在感がありました。そんな彼のキャラも非常に面白い。超怖そうなのに、客を送って行けと言われて「やだい!やだい!」て…。声のトーンと江戸っ子口調が非常にマッチしていて、普通に彼の虜になっちゃいましたよ私。ものすごく可愛い・・・!
そんな丹下左膳と矢場のおかみの絶妙なやりとりも面白い。「送っていくんかい!」「連れてきたんかい!」「ご飯食べさせてやるんかい!」「竹馬教えるんかい!」って、いちいち全部に心の中でつっこみを入れさせる彼らの行動はとてもいじらしく、そして非常に可愛らしく、次第に病みつきになっていくクレッシェンドタイプの心地よさ。いやー面白いなぁー。
それから、彼らの内面をいちいち描いていないところが面白いと思いました。直接的に心情を描いていないのに、彼らの気持ちが手に取るように分かってしまうのは何故?それがすごいなーと思いました。
冒頭の不思議な魅力のあるカット割には良い意味で古さを感じつつ、でも作品そのものは全く古さを感じさせないとても貴重な作品だと思います。ただあまりにソツがなさすぎて、逆に勿体無いとも思いました。もう少し、ホラすごいでしょ?ってアピールしてもらったって、私的には全然OKなのに。でもそういうところがないからこそ、この作品が名作たる所以なんでしょうけど。
あと、ちょっと気になったのは柳生家の奥さんの存在。彼女だけちょっと可哀想じゃない?婿養子だった為か、強気な奥さんではあったけど、なんか可哀想でした。昔の女性はみんなあんな弱い立場だったんでしょうかね?
ちなみに私が借りたDVDには「幻のシーンなし」バージョンと「幻のシーンあり」バージョンが収録されておりました。当然"あり"バージョンで鑑賞したんですけれども、あれはあれでなくても全然良いかなと思いました。あのシーンがなくても、それまでの流れとして「やっぱアンタ来たんかい!」ってつっこめるし。
しかし丹下左膳て人はシリーズ通してこんなにお茶目で愛くるしいキャラなんだろうか。ものすごく気になるところです。また別の作品も見てみたい。・・・でもレンタルしてないんですよねー。
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08.04.11記
09.11.29DVD再鑑賞
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