何でこんなに点が低いのか、理解に苦しむ。あそこで犯人が解った時点で、サスペンスとしては毛色が違うということに気づいて欲しい。男の虚勢と挫折をさらりと盛り込んだこの奥ゆかしさこそ、『ミッドナイトクロス』に始まるデパルマの魅力であり、彼の政治サスペンスを凡百とは分け隔ててきた要素なのだ。これ見よがしの音楽も、この映画では功を奏していたはずだ。

　追記：

　やっぱり、めちゃめちゃ面白い！

　粗に見える部分は、話の骨格と輪郭を観客に最低限理解させるという、ヒッチコック信者のデパルマがメソッドに則った結果だ。ディテールに無理が生じたって、二人の男のドラマがエンターテイメントの中で鮮明になったのだから、これでいい。今回は陰謀もの。陰謀ものと言えば『ミッドナイトクロス』だが、あれも立ち向かう男の切なさが描かれた逸品だった。