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[コメント] 機動警察パトレイバー2 the Movie(1993/日)

この国では、昔から子供向けのTV特撮ものやアニメのルーチンな設定を使って、社会派映画でもやれないような先鋭的な政治的意見をたまに盛り込んできた。90年代、押井守だけがその伝統(?)を受け継いだ。「だから遅過ぎたと言ってるだろ-が!」という後藤隊長の叫びは今の我々に対する叫び。
ジョー・チップ

バブル崩壊、湾岸戦争、PKO派遣、自民党政権の敗北、これらの出来事が戦後の価値観を揺るがす大きな動きがであり、現在の状況の大元を作ったのは間違いない。しかし総てを把握できないにしても、当時のその道の大家で、この状況をいっちょ作品化してやろうとした者は皆無に近かった。

何も言えなかった、と言った方が良いかもしれない。それはヘタに言ったら圧力がかかる、といったことだけではない。政治家や文壇の権威ある人々の「戦争」とか「平和」とか、或いは「宗教」とか「国家」などの言葉には重みというものが無かった。おそらく彼らの頭の中には観念的なイメージしかなく、当時はそれでも通用したのである。いわば言葉の遊び(これに関しては右翼も左翼も同じ、と言っておこう)。どちらもまさか自国が他国に軍隊を送ったり、他国が具体的に攻めてくる状況が生まれるとは思っても見なかったのだろう。そしてこのことが現在の政治、または宗教の混迷を招いたのは明か。そしてマンガ、アニメ関係の人たちがオタクという狭い世界の中で声をあげたのである。

この国の行く末をこれほど早い時期に先鋭的に語ったこの映画のスタッフには率直に敬意を払いたい。

たとえ荒川が延々と喋りすぎても(はっきり言ってうっとおしい。こういう人物を通さずにメッセージを語らせるのが監督の仕事では?)、アニメなのに動きが感じられず全部止め絵に見える(見た目の情景の美しさはあるけどちょっと違うんだよなー)、と思えても、結局大山鳴動・・・じゃねーのか?と思えても、やはりこの映画は映画史に残ります。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (5 人)浅草12階の幽霊[*] おーい粗茶[*] ペンクロフ[*] 水那岐[*] かける[*]

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