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[コメント] 機動警察パトレイバー2 the Movie(1993/日)

暗渠(あんきょ)というイメージ。(※注 「PART1」のネタバレの怖れもあります)
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







お気に入りのイメージというものがあるように、その逆に不快さを感じるイメージというものもあるだろう。記憶違いかも知れないが、何かのインタビュー記事で押井監督は「川」を描くのが好きだと話していたように思う。であればそれに蓋がされた状態、河川の上に道路ができて、足元の流れの存在は忘れられ、人や車が行き交うイメージ。監督はこれが生理的に嫌なんではないだろうか?

PART1、PART2の2話の「映画版パトレイバー」を犯罪ものとして観た場合、真の主役は犯人たちだろう。彼らはいずれも少しだけ未来の(=これからの)東京、そこで生きる人間の生き方を含めた「都市」のあり方について警鐘を促すことを動機とし、彼らに押井監督が自己を代弁させていたと思えるのは、どちらの作品も犯人たちの主張がそのまま作品のテーマになっているからに他ならない。特車課の面々が、彼らの犯罪に対峙はするが、彼らの考えを憎んだりするような反応はせず、どこかその考えを然るべしとしているような、微妙な共犯関係さえ感じさせるのは、監督が自分の主張と本来の主役を衝突させることを避けざるを得なかったからだろう。

東京湾に蓋をするバビロンプロジェクト。利便の追求の行き着いた先、生身の生活を覆い尽すネットワーク社会、文字通り血の流れを足下に隠して成り立つ平和、高層ビルの立ち並ぶ都市自身こそ、本来息づいているものを塞いでいる巨大な蓋そのものだ。そんな暗渠を取っ払い川の流れを白日の下に取り戻す。その役割を託されたかのように、最終決戦で特車課の面々は2話とも地の底から天蓋をぶち破って現われる。真の主役(監督が言いたかったこと)と物語の本来の主役(シリーズの冠をいだいている上での責任)で上と下から「都市」を挟撃させて見せたように見えなくもない。

…まあ、そんな能書きはともかく、その秀逸なサスペンスの展開、キャラクターたちの溢れんばかりの魅力、抑制を効かせた演出、作画、音楽に支えられた素晴らしい面白さ。ついつい2足歩行のロボットっていうのがなあ・・・と逆にちょっと残念に思えてくるぐらいのめり込んだ。

(評価:★5)

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