[コメント] オッペンハイマー(2023/米)
世界中至る所でキナ臭さが増している今の時代における作品の意義は認めるものの、戦後80年近くこの葛藤に苛まれてきた日本人からすると、今さら何言ってんのよと言いたくもなってくる。
正直、前半は説明的な場面が続いて眠気に襲われた。オッペンハイマーの女癖の悪さもあまり上手く表現されていないように思う。R15+指定の理由と思われるフローレンス・ピューの騎乗位ヌードも何だかサービスシーンみたいな印象で空回り。
この映画の白眉は何といってもトリニティ実験のシークェンスだろう。実行に至るまでの緊迫感、そしていざ爆発が発生した際の強烈な閃光、爆風、時間差で訪れる爆音の凄まじさ。実験成功の歓喜よりも先に、とんでもないものを作ってしまったとの恐怖が勝る場の感情を味わうことができる。 それに対して広島・長崎への原爆投下は16時間も経ってからラジオで報じられるだけという対照。逆説的に、この対照こそが苛烈な現実を描き出す。
ストロースとの政争がプロットの軸に据えられるが、自分には彼が魅力ある敵役には思えなかった。狡猾さも冷徹さにも欠ける成り上がりの俗物。それならそれで演出が一つ二つ足りていない感じがする。
オッペンハイマー以外で知っていた人物はアインシュタインとトルーマンのみだったが、この2人が短い登場シーンながら強い印象を残す。ゲイリー・オールドマン、チャーチルに続いて流石の芸達者ぶり。
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