[コメント] ラストナイト・イン・ソーホー(2021/英)
ドアのシルエットから始まる相似のシーンはもう一度出てくる。彼女はお祖母さん−懐かしいリタ・トゥシンハム−と二人暮らし。でも、鏡の中に別の女性が見える。鏡は重要な道具立てだ。
マッケンジーはロンドンの服飾デザインの学校に合格し、一人旅立つ。こゝからが本筋だ。寮のルームメイトたちは、現代的な娘ばかり。1960年代あたりが好きなマッケンジーには合わない。なので一人暮らしを始める。屋根裏部屋。大家さんは、なんとダイアナ・リグ。マッケンジーが暮らす(バイト等も含めた)生活圏は、かなり猥雑な場所。バーから出て来てニヤリと笑う男はテレンス・スタンプだ。流石に雰囲気がある。
そして、1960年代へのタイムリープ、その導入部は瞠目する造型だ。映画館には『007 サンダーボール作戦』の電飾看板。鏡にアニャ・テイラー=ジョイが出現してからのドキドキ感。マッケンジーとテイラー=ジョイとが同じ所作をし始める。この、リインカネーション(転生)表現の、テクニカル部分が一番オモロイ。特に、最初にジャック−マット・スミスとダンスする場面での、二人の入れ替わりの見せ方は、実にワクワクするカッティングなのだ。
あとは、だんだん飽きてくる。転生なのかどうかもムチャクチャになるし。夢オチの連続攻撃。大袈裟な効果音、大仰な演出の連続でもある。悪夢の中だけでなく、現実生活の中にも、顔無しジジイたちが出てくるようになって、古い怪奇映画オマージュの見せ方だとは思いながらも、特に怖くないし、くどいので余計に中途半端でチープな表現に見えてしまうのだ。あるいは、ラスト近くのマッケンジーと大家さん−リグの会話シーンなんかは、寄り気味の正面バストショットの切り返しが、動きのない画面でツラかった。
ちょっと辛口の感想になってしまったが、旬の二人の女優を堪能する、という部分だけで、全編楽しく見ることができますし、BGMや美術装置も含めて、刺さる人も多いと思います。私としても、勿論、マッケンジーとテイラー=ジョイに見とれたが、終わってみれば、お祖母さんのトゥシンハムの相変わらず奇妙な顔が、目に焼き付いて離れません。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (3 人) | [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。