我々観客は、マッツ・ミケルセンがダンスをするシーンが用意されており、そこがクライマックスだろう、ということを予期しながら見ることになる。

　全編手持ちか。屋内で、フィクスのように見えても、かすかに画面が揺れている。ほとんど切り返しも無しだが、ポイントではやる。例えば、ミケルセンとその妻−マリア・ボネヴィーとのシーンでは、序盤は縦に並べて、フォーカスの演出で見せる。だが、ミケルセンが、酒を飲み、旅行（カヌー）を誘う場面では、テーブルについた二人の切り返しと、横に並べたツーショットのカットを持って来て、関係性の変化を示す。

　本作のジャンルの一つとして、多くの映画サイトでは、コメディと記載されているが、確かに、コメディタッチの部分もあることはあるのだが、全体にかなりシリアスな映画だという印象を私は受けた。コメディっぽいシーン、例えば、サッカーの試合での、メガネ坊の描き方や、キルケゴールについての口頭試問を受ける学生に、酒を飲ませる場面などは、取ってつけたように、あるいは、やり過ぎに感じる。

　シリアスな印象ということで、ついでに云えば、エンディングも、もっと厳しい結末で良かったと思う（私の好み）。また、これは、あちこちで喧伝されているので、ネタバレでも無いと思うが、ラストはミケルセンの満を持してのダンスシーンだ。ダンス自体のキレも見事だが、アクション繋ぎが炸裂して圧巻でした。手持ちのカメラワークの中で、かなり大胆なアクション繋ぎを見せるのだ。