[コメント] 人生の乞食(1928/米)
殺人現場でのリチャード・アーレンとルイーズ・ブルックスの出会い。二人相対して、それぞれ、ディゾルブ繋ぎのポン寄りで驚きが表現される。なんて見事な出だしだろう。
その後、二人で列車に飛び乗ったり、『北国の帝王』のボーグナインのような乗務員に見つかり、棒で脅され飛び降りたり、藁の山で一夜を共にしたり、といった逃亡シーンも面白いが、ホーボーの親分、ウォーレス・ビアリーが登場してからが、がらりと雰囲気が変わって荒唐無稽さが増す。ビアリーは暗闇の中、酒樽をかついで現れるのだが、ちょっと彼の登場だけ、特別な照明が用意されているのだ。この後、ホーボーの集団と一緒に皆汽車(貨物車)に飛び乗り、後半は列車が舞台装置となるのだが、列車活劇としても良く出来ている。
また、本作のもう一つの大きな見せ場は、登場からずっと男装だった(警察の目をくらますために男に化けていた)ブルックスが、いきなり少女の格好になる場面で、ビアリーが盗んできた洋服なのだが、ほとんど幼女のようなイメージになる倒錯した演出だ。さらに、ビアリーは横恋慕、といった麗しい気持ちではなく、単に自分の女にしたいと思っていただけなのだが、その彼が心変わりし、あっけらかんとアーレンとブルックスの二人を祝福するようになる、そのあっけなさに感動する。ビアリーに焦点が当たったラストの展開は無茶苦茶だが、それとて、理屈なんてどうでもよいと開き直った映画らしさだ。矢張り、この荒唐無稽さこそ映画なのだ。
#前半でベイカリーの馬車の後部ステップに二人飛び乗るが、御者は居眠りしている。この御者というか、店員は若きグイン・ウィリアムズだ。一目で分かる。あと、ホーボーの一人で、裁判の真似事をするシーンで弁護人役をする片足の男は、ロスコー・カーンズだ。
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