[コメント] 凱里ブルース(2015/中国)
ファーストカットはほゞ360度パンニング。部屋の中をパンニングし、カメラは途中で、開いたドアを抜け、テラスの方へ前進移動する。飲んだくれの犬、と呼ばれる犬がウロウロしている。というように、前半の凱里の町では、緩やかにパンニングで見せるカメラワークが見どころだ。
中盤、凱里から、主人公は旅に出る。その旅の途中で、巷で喧伝されている、驚くべきシーケンスショットの造型がある。バイク乗り(バイクタクシーなのか)の兄ちゃん達がたむろする場面、ヤンヤンという名前の若い女性の登場から始まる。こゝから、ステディカム移動が延々と続くのだ。これは凄い。バイクの荷台にバケツを積んでる兄ちゃん。主人公はこのバイクに乗せてもらう。カメラは、ステディカム使いのオペレーターが、こちらもバイクに乗ったり降りたりしながら、主人公やヤンヤンを捕捉し続けているのだろう。楽器をピックアップドラックで運ぶ若者たち。ヤンヤンと散髪屋の娘が、画面に出たり入ったり。ヤンヤンは、主人公のシャツのボタンをつけ、川の方へ坂道を下り、渡し舟で川を渡り、岸辺で風車を買い、坂道を上って、山間の橋を歩いて、散髪屋のところへ戻って来る。この間、音楽(楽器の演奏というか練習というか)がずっと聞こえているのだが、このライブの音は、楽器を運んでいた若者たちだった。主人公は飛び入りで歌を唄わせてもらう。ジャスミンの歌。バイクの兄ちゃんは、列車に時計の絵を描く話をする。過去に戻れると云う。野人の話も。
このシーケンスショット、後で調べると、40分に亘ってたということだが、どれだけリハーサルを行ったのだろう。単に長回しが有難い、ということではなく、平面的な空間描写に加え、高低の移動の感覚も幻惑的で、なんとも魔法にかけられたような衝撃があるのだ。
さらに、エンディングの列車内から撮った、すれ違う列車の表現も、シュール極まりない見事な造型だ。
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