[コメント] 関東無宿(1963/日)
無内容の方法が確立されたという意味で、これが清順の代表作なのだろう。原作が平林たい子とは信じられない。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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『すべてが狂ってる』とか『肉体の門』とか、無内容を標榜するわりに一部の清順映画には内容があり過ぎる処がある。その点本作はいい。なにせヤクザを女子高生がからかう導入なのだ。無内容の力学のなかで、主演と思われた松原智恵子は途中で放り出され、中原早苗が物語をかき回し続ける。小林旭の冗談としか思えない極太眉毛は本人のセレクトで、清順は仕方なく採用したらしいが、それなら旭のほうが本作の趣旨を理解していたのではと思わせる。殿山泰司が組長ってのも人を喰っている。
小津の名言に「社会性がないといけないというが、人間を描けば社会は出てくる」というのがあるが、本作はどんなに人物を描いても社会は何もでてこない。ただ男女の機微だけが詳述される(本作の収束もその色合いが濃い)。このスタンスは晩年まで変わらなかった。清順が自作を「大船調」と呼ぶのがこの意味と捉えれば、それはたいへんよく判る。
なお、蓮實先生によれば、任侠映画のブームは後年のことで、本作はそのパロディではない。むしろ先駆なのだった。誉め処は全部どこかに書いてあるがひとつだけ。伊藤雄之助の着流し姿がただただ格好いい。
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