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[コメント] 未来よ こんにちは(2016/仏=独)

ごく単純な事実の指摘に過ぎないが、全篇にわたってイザベル・ユペールは忙しなく動き続ける。彼女にはおとなしく映画を鑑賞することすら許されない(『トスカーナの贋作』!)。少数の例外に留まる「佇む」「座る」「横たわる」も(楽譜における休符のように)「動く」の一形態として演じられるだろう。
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ひたすらその一挙手一投足を見る愉しみに懸けた映画であるという点で、「アクション」の、「被写体」の、「演出」の、そして(語弊を恐れずに云えば)正しく「アイドル」の映画である。とは云え、ユペールに留まらず全被写体にアイキャッチングな顔面が見出されているあたりがミア・ハンセン=ラヴの懐深さであり、現今ではアメリカ映画とフランス映画にのみ実現可能の豊かさだ。

また、ハンセン=ラヴを評するにあたってエリック・ロメールが引き合いに出されることの妥当性には首を傾げていたが、これを見て考えを改めた。そのカッティングの呼吸(カッティングによって生じる速度感。カット間で省略された時間量は往々にして不明である。また、そこから醸し出されるところの巧まざるユーモア)には確かにロメールに通ずるものがある。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)ぽんしゅう[*] けにろん[*] 袋のうさぎ

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