[コメント] 母と暮せば(2015/日)
描かれるのは、我が身に起きた過酷な現実に思い悩み妄想する母親(吉永小百合)の姿なのだが、だた悲惨なだけの話で終わらせたくなかったようだ。とはいえ、山田洋次らしからぬ「郷愁」や「昇天」の象徴表現は、悲惨さに対してあまりも脆弱だったのでは。
かつて山田洋二が『母べえ』(07)で、吉永小百合に体現させた戦時下の女の「激しい怒り」の対極として、現代の我々が謳歌している豊かさへと連なる「次への希望」を描きたかったのだろうか。
しかし、母親の夢枕にたつ南方戦線の長男の悲壮や、復員局で父の消息をたどる少女(本田望結)の気丈な様子が強烈な印象を残すぶん、宗教的な寛容さや温もりといった既成の救済イメージの引用は、製作者の意図に反して「いまの時代」に対して口をつぐんいるように見えてしまう。
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