[コメント] ハッシュパピー 〜バスタブ島の少女〜(2012/米)
まず最序盤、タイトルバックとそれに連なる「花火」のカット群がべらぼうに感動的だ。画面の幻想性を廉価で実現しようとするベン・ザイトリン演出が早くも最良の形で実を結んだ瞬間であるが、さらにブラスの旋律が感動を二乗するだろう。ここに限らず、劇伴音楽は複数のシーンで高揚感と涙腺を刺激する。
ルイジアナの湿地帯ロケーションから活力を吸い上げて、次々とパワフルな画面を繰り出してくる。上に挙げた花火のカットや後景で小屋が炎上するカットなどもすばらしいが、やはり大嵐が去って後、バスタブが水上集落のごとき様相を呈するあたりの画面群がとりわけ独創的だ。予算もないというのに、これほどの水の風景をどうやってセットで創造すればよいのか。むろん創造する必要はない。実際にそのような地に赴いてカメラを回せばよいのだ。ゴダール&トリュフォー『水の話』と同じ発想である。さらに、その水の上を行く方形のボートであったり、生き残り住民の共同住宅屋根に据えられた無数の棘状突起木材など、「形状」に対するセンスもことごとくいい。
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