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[コメント] 仁義なき戦い 広島死闘編(1973/日)

肉と酒とタバコしか喰らってないのだろうなあ、という男のギラつきが物凄く、画面のエネルギーは前作をも凌ぐが、テーマ性も前作があってこそ、本作ならではのものがある。文太が後景にいるのは、物足りなさではなく、こういう味わいと感じるべき。戦後のイエ的悲劇から個人主義へ。これも一つの日本。
DSCH

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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親殺し・子殺し・兄弟殺し、「何処でどう道を間違うたんかのう」の神話的無常。前作のイエ的悲劇は後景に退き、パワーゲームを左右するのはこういった湿り気ではなく、あくまで突っ走る個人である千葉と北大路。親がどうしたとか関係ない。オールドスタイルの親分連中はひたすら暴風の後を誰の顔を立ててどうとかのオールドスタイルで必死に片付けて回るだけ(利用しているという老獪さもある)。今作は旧弊の破壊的な個人主義が屹立する。やや先走っているが、これは時代の空気の変遷とダブるものがある。やはり深作はヤクザものを通じて時代をよく描いた人なんではないだろうか。まだ後作を観ていないが、個人主義が高じて、最終的には虚無的軽薄、変質した「仁義なき日本」に至っていくのではないだろうか。その先に、たとえば『日本で一番悪いやつら』のような達成に繋がっていくのではなかろうか(適当)

人を人とも思わぬ見境ない千葉の狂気に、翳りがなく明るい(これが肝)のがいい。しがらみにがんじがらめになっている後景の文太、成田、親分連の渋面とよい対比になっている。北大路の眼光もいいが、もちろん梶が素晴らしい。

(評価:★4)

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