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[コメント] ガラスの鍵(1942/米)

満足度の高い犯罪映画だ。少なくも、アラン・ラッドヴェロニカ・レイクのコンビ作の中ではトップクラスだろう。クレジットではラッドよりも上にブライアン・ドンレヴィが出るが、役割としては、ラッドが純然たる主役であり、レイクがヒロイン。ただし、ドンレヴィもラストを締める良い役だ。
ゑぎ

 プロットは、二組の兄妹(レイクとその兄、ドンレヴィとその妹)に絡む殺人事件を、ラッドが両サイドに働きかけて解決する、というものだ。そこにギャングのジョセフ・カレイアや、その子分=ウィリアム・ベンディックスが登場して暴力シーンを形成する。カレイアは物事に簡単に動じない腹の座った大物感をよく出しており、また、ベンディックスは何をしでかすか分からない、狂気的な悪役として見事な存在感がある。本作の良さは、ラッドもこれらの悪役に全く負けていない、胆力のある人物として演出されている部分をまず挙げるべきだろう。

 といったことで、登場人物は多彩かつキャラ立ち抜群だが、カメラワークも、小さな寄り引きや、力のある屋内(酒場等)のロングショットが繰り出されて、実に見応えがある。タイトルにこじつけて意識したものかどうか分からないが、ガラスにまつわる演出も興味深い。思い出すまゝに記述すると、冒頭近く、男が窓ガラスをブチ破って外の池に放り出される場面がある。あとは、ラッドがビールのジョッキを叩き割って凶器として脅す演出。ラッドとベンディックスが二人で対峙するシーンのショットグラス。そして最も驚いたシーンは、軟禁されたラッドが逃走する際の、階下のガラス屋根を突き破って落下する真俯瞰ショットだ。これは凄い。最強レベルのカットではないか。

 他にも、女性がピアノを弾きながら「I Dont Want to Walk Without You」を唄う酒場のシーンや、黒幕や敵が皆集まっている暖炉のある邸のシーン等の見事な空間描写も明記すべきだろう。犯罪映画らしい繋がりの悪い部分もあるにはあるが、スチュアート・ヘイスラーの力量が納得できる傑作だ。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ぽんしゅう[*] 袋のうさぎ

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