[コメント] 告白(2010/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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原作を読んで、その突き刺さるようなテーマにはすでに打ちのめされていた。それをどう映画化するのかな、と興味深く鑑賞したが、期待通り、いや、期待以上に作り込まれていたので驚いた。原作と同じテーマを忠実に再現しながら、この映画ならではの部分でも堪能させてくれる出来。これであれば、お決まりの「やっぱり原作の方が良かったよね〜」という台詞も出て来ることはない。
中島哲也監督作は『下妻物語』から劇場で鑑賞しているが、観るたびに演出が強化されているし、監督としての幅広さも感じさせてくれる。前作『パコと魔法の絵本』を撮ったのと同じ監督がこの映画を撮ったなんて、スタッフクレジットを隠されていたら到底想像はできないだろう。だが、どの作品でもそのこだわりの映像演出にはキレがあって、それが今回も見事に生きていた。
実は、こんなに暗い内容の原作で、中島哲也の映像がどう生かされるのだろう、と疑問に思っていた部分もあったが、牛乳や血が飛び散る際のスローモーションなどが、バランスを崩すギリギリのラインでスパイスとして生きていて、それが作家性につながっているようにも思えた。どんな題材での、自らの映像のスタンスはブレないという点で、中島哲也作品は確実に「観ても損はないモノ」のレベルに来ている気がする。
原作を読んで、復讐の恐ろしさや人間がいかにエゴイスティックに生きているかなど、負の部分を多いに考えさせられ、それを改めて突きつけられる内容になっていたので、再確認の意味合いもある分、多く語ることはないだろう。
だが、ひとつだけ、原作では僕の頭の中になかった部分が、この映画によって見えてきた。それは「クラス」の雰囲気。僕の頭の中では、松たか子演じる教師がホームルームで告白をする冒頭のシーンで、生徒たちが騒いでいるなんて思ってもいなかった。それは原作を読んでいるときも同じで、生徒はみんな静かに聞いていると思っていた。だが、映画で描かれていた教室は違ったのだ。こんなシリアスな状況でも、中学生たちは騒いだり、ケータイでメールをしたり、どこか集中力を欠いたような行動をしている。それが、この映画が描いた一番の怖さに思えた。もし、これが中学生の日常ならと考えると、スポットを当てられた個人だけでなく、集団として、いまの中学生にある種の恐怖感を感じてしまうのだ・・・。
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