[コメント] 愛のむきだし(2008/日)
六〇分間のアヴァンタイトル! 西島隆弘はコメディ演技に天才的な冴えを見せ、奇抜な着想を支える演出のドライヴ感にも目を瞠る。しかし後半からの転調は支持しない。これは下劣なコメディであることと大真面目に愛を語ることの両立を貫いてこその映画ではなかったのか。ここに『紀子の食卓』的風景は不要だったはずだ。
ところで、私が見たこの映画のプリントには英語字幕が付されていました。おそらく、国内での一般公開に先んじて海外の映画祭に出品されたという公開に至るまでの経緯、および配給会社がP&A費を抑制したためにこのような事態が生じたのでしょう。もちろん、上映劇場のすべてに字幕付きプリントが配給されていたのかどうかは知りませんが、ともかく「日本の劇場で日本人の観客に囲まれながら日本語の話される日本映画を英語字幕付きで見る、などという経験はそう多くできるものではなかろうし、英語の勉強にもなって、これは一石数鳥だわい」などと嘯きながらの鑑賞となったのです。むろん日本語を母語に持つ私にとって英語字幕を見る必要などいささかもなかったのですが、やっぱりあるものは見てしまうというか、つい字幕に目が行ってしまうことが度々あって、無意識のうちにそれを自ら日本語に訳していたり、今スピーカーから聞こえつつある日本語と照らし合わせてみたりといったことがありました。それは日本語の映画を見るうえで本来無用な言語理解プロセスの半強制的な介入であり、悪く云えば画への集中を欠かされたということにもなるでしょうが、映画テクスト/体験に異化効果をもたらすその風変わりな鑑賞形態はこの風変わりな作品には不思議によく適していたようにも思われました。
以上、個人的な備忘も兼ねて記しました。
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