[コメント] 深夜の告白(1944/米)
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どうにも品が良過ぎていけない(当時はこれでもとても品が悪かったと評される作品だが、サイレントだってもっと品の悪いハリウッド作品は幾らでもあり、何でこれが通説になっているのかよく判らない)。品とはこの際は欲望の所在が奈辺にあるのか悟られまいと隠してしまうテクニックであって、観客はフレッド・マクマレイの動機をそのむっつりスケベ振りから想像するしかなく、何とも判然としない。「運命の女」という曖昧な表現に寄りかかって、まあ男なら騙されるよねというぐらいの浅いドラマしかなく、動機が不鮮明だから全てがゲームにしかならないし、ゲームにしては簡単な粗があり過ぎる。何であの人が、という実際の犯罪は、このように訳の判らないものなのだろうからその意味ではリアルかも知れないが、これが狙いでもあるまい。
相手の煙草に火をつける小ネタや、いかにも憎たらしく登場する娘のジーン・ヘザーが後半に求心力を発する辺り、ワイルダーらしさが随所にある訳で、そちらを主眼にしきれなかったうらみがある。非情な世界を徹底するのはワイルダーの得手ではなかったのだろう。バーバラ・スタンウィックの造形はゲームの仕掛け人以上のものが何もなく、最期の科白など唐突で余計に感じられる。
コメントの件では、ポールハンガーにかかった帽子とコートの影がちょうど首吊り死体の格好に見える。ここはギョッとするショットだが、しかし面白い画はここぐらい。フレッド・マクマレイの心情をアコーディオン・カーテンの影で示す手法は黒澤がパクりまくっているが、本作が本家という訳でもなかろう。ワイルダーならも少し決まったカットがあってもいいんじゃないか。ということで全般に物足りない。
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