[コメント] 近松物語(1954/日)
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長谷川一夫(茂兵衛)は当時46歳!? やっぱり、綺麗なぁ。律義な職人であり商人である茂兵衛を真面目に演じてらっしゃいます。
香川京子(おさん)の若い頃ってタヌキ顔だし、可愛いけど綺麗だとは思わないんですが(今はすごく綺麗だけど)、一歩間違えば不貞なだけの女になる難役を好演。後半狂い過ぎないのが格調高くて素晴らしい。ラスト、市中引回しの馬上の表情に鳥肌が立ちます。この人って頭も性格も良いんだろうなぁ。
浪花千栄子先生(おこう)は流石の貫禄。個人的にはコミカルな役よりこういう重々しい役の方が好きです。いるよねぇ、こういう婆@京都。進藤英太郎(大経師以春)の声はいつ聞いても惚れ惚れします。南田洋子(お玉)が可愛い! 若い頃は大映の女優だったんですね。新鮮。
ストーリーとしても本当に良く出来た話。「大経師昔暦」って「曽根崎心中」や「冥途の飛脚(恋飛脚大和往来)」「心中天網島」に比べると印象が薄いのですが、近松門左衛門という人はどうしてこうも、善良な市民が図らずも転落する「瞬間」を捉えることが上手いんでしょ。
それに良く応える依田義賢の脚本。テンポがちょうど良くて飽きさせません。依田ちゃん、やったらできるがな! 時代の空気というものを余すところ無く伝えます。文化史の研究なんかしてる学生は正座して観るべき作品です。
書かずにいられないのが、衣裳考証。こういうのを衣装ってんだよッ! 上野芳生という方の衣裳考証は本ッ当に素晴らしい。綿密な時代考証の上に光る独自のセンス。白黒なのが残念でなりません。いくらハイビジョンだって言ってもこういうの作れる人がいないから、今の時代劇って見ててツマンナイのよね。
併せて結髪。当時の結髪って役柄は勿論、女優の顔の作りに合わせて髢を入れて結い上げるんでしょうね。髱の風情ったらありません。元禄島田に結われたい。
まとまらん。名作です。
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