[コメント] 宗方姉妹(1950/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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本作を俯瞰してみると、監督らしさというのは確かに多く見られる。特に戦後になって監督作品で顕著になっていった世代の移り変わりによる、古い価値観と新しい価値観のぶつかり合いが描かれているし、その中で結婚問題が大きくクローズ・アップされている。あくまでこのテーマを突き詰めて映画化していった小津監督らしさはいくらでも見て取れる。しかし、一方では大きく変わっているの部分もある。まず本作では、戦後の小津監督作品では結構珍しい離婚の危機を正面に捕らえている点が挙げられよう。小津監督作品には離婚というのは結構数多く描かれているのだが、その大部分は既に離婚した。と言うところで、それを静かに後悔とも、懐かしいとも思える表情で顧みるシーンは多くても、実際に離婚の危機で慌てる描写は珍しい。この辺は原作付きの縛りとも言えるかもしれない。それと何より、本作では演技者それぞれが大変活き活きとして見えるのだ。内容的には大変その当時の現代風にあふれた作品と言っても良い。
小津監督作品の面白さの一つは演技者それぞれが、監督の意志に従い、ぴたりと演技を決めるところにあるのだが(だから役者の方にも職人芸が強いられる)、この作品ではややその枠組みよりもキャラクタの感情面の方が強調されていたようだ。特に高峰秀子の演技は、内に思いを込めず、思った通りのことを率直に出している(そしてそれをそのまま行動に表してる)。この辺りが良いアクセントとなっているが、これが新東宝で撮ったことによるのか、小津監督の模索によるものかは、今となっては分からないが。
本作は間違いなく小津作品でありつつも、らしくなさも強調された、興味深い作品だ。更に、本作でかなりの好評を受けていながら(生前の監督にとっては最大の興行収入を上げている)、再び松竹に戻ると、いつも通りの作品を撮っていると言うのも面白いところ。
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