[コメント] 明日の記憶(2005/日)
抑制の効いた演出の中で、堤特有のケレンが光る。ただ、この物語、正面から見据えるにはちと重い……。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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個人的な好みなのだけれど、堤幸彦の演出はオーバーに遊びすぎて物語を食ってしまうきらいがあって、あまり好きではなかった。だけど、この映画の演出は適度に抑制が効いている中での小ネタとしての「お面みたいな顔の人」やら何やらだったので、重いテーマの中で心地よく受け入れることができた。
ただ、この話はつらい。重い。かなしい。描かれるのは、主人公の言葉を借りれば「人が人でなくなる」話で、丹念すぎるほど丁寧に重ねられるエピソードはいちいち胸をかきむしる。ラストで、献身的に介護しながらついぞ忘れられてしまう奥さんの心中たるや、もうたまらなくなってしまう。冒頭に立ち返ってそれでもふたりが「一緒にいる」ことが救いといえば救いなのだが……。
さりとて、病気が不可避だったとしたらこの映画に描かれる物語はもっとも恵まれた部類のケースなのだろう。会社を辞めなくてはならなくなってもクライアントや部下は優しい言葉をかけてくれるし、奥さんも孫もいる。家もあるし、それなりの蓄えもありそうだ。娘の旦那だって良さそうな男だ。もし自分が……と考えて、心底寒気がした。この映画は本当の地獄を描いてはいないのだ。なんと恐ろしい。今のうちから周りの人に対して誠実に、優しく生きておかねばならんと思った。思いました。はい。
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