[コメント] ブロークバック・マウンテン(2005/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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皆さん慎重に言葉を選んでいるようだが、わたし自身は同性愛に強い違和感はない。世の中色んな人間がいるのだし、好きな相手が同性って事もあるかも知れんね、と思う。… ただ、世の中には暗黙の了解という共通言語があるので、対面時に「同性が恋愛対象となり得る」という前提とそうでないの(いわゆる普通の状態)とはかなり異なるので、対人関係がより複雑化して面倒も増えるだろうな、と想像される。しかし世界的にこの映画が評価されたという事は、色々言われ乍らも同性愛に理解を持つひとが実際は多いという事かも知れない(少なくとも頭の中では同性愛の物語を自分の中でも咀嚼出来る余裕を持つひとが増えている、という事か)。
映画自体は勿論同性愛へのこだわりも大きな要素なのだろうが、構造的には(恐らく演出したアン=リーにとっては)「ひとに言えない問題を2人だけで共有している」という事だと思う。だから基本的には「不倫」の映画なのだと思う。各々の結婚(男女婚)は秘密の関係より後だが、構造的にはそうである。例えばこれが封建時代の貴族と平民の恋でもいい訳だ。裡に秘めた苦しさという点では『死ぬまでにしたい10のこと』にも通じている。これがあの大自然の美しさの中で語られ、長い年月の哀愁を伴う為に更に輝きを放つのである。「同性愛という衝撃的な主題でなければ、畢竟大した物語ではない」と考えるか、「同性愛という事も含めて、秘する愛・忍ぶ愛の描き方が美しい」と考えるかが岐路である。
男2人の問題が目立つが、奥さん2人も問題がないとは言えない。イニスの奥さんは古典的な幸せ以外のものは理解できなさそうだし少し神経質っぽいようにみえる。ジャックの奥さんは少し冷淡だ。無論、彼女たちは「ついてなかった」訳で、こんな状態なら無理ないだろ!と思う観客もいるだろう(わたしはそうは思わないが)。相手が違えばもっと全然幸せ一杯な家庭で生涯を終えられたのかも知れない。でも、そんな事はどんな夫婦にだって言える事だろう? 奥さん2人は自分たちの所為ではないかも知れないけれど、兎に角自分たちの旦那を繋ぎ止める事が、出来なかったのだ。(わたしで想像しても、アン=ハサウェイが奥さんなら無問題に超OKかというと、映画の中のような彼女なら矢張りキツいところはありそうに思う…)
これだけ深い愛が片想いだった時こそが真の悲劇で、その状況はとても映画には出来ないだろうな。…
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