[コメント] 静かなる決闘(1949/日)
一から九まで千石規子の映画で、だから地味に映るのかも知れないが、彼女が最期までその魅力の中心である「皮肉っぽさ」を失わないところに非常な好感を持った。
映像演出的にも黒澤の意識は彼女に集中している。
千石の初登場シーンを思い浮かべてみよう。壁だか椅子にけだるそうに寄りかかる見習い看護婦。画面の奥には薄暗い病院の廊下が横たわっている。単品でもとても力のある映像だが、それだけではないのだから参る。
「再登場」シーンである。三船の病気の原因を盗聴し、少しづつ改心していく彼女、母親になった彼女が、やはり同じ病院の玄関口で、湯を沸かしている。見回りの巡査に対して彼女はやはりけだるそうで、依然として皮肉屋のままなのだが、注意すべきは、カメラが反対方向に置かれている点。廊下側から彼女を捉え、開け放たれた窓の外には、晴れ渡った空と、見事に復興した都市群が見える・・・。
素晴らしいと思う。私はこれを観て、この深刻な物語の行く末にきっとある「希望」を信じ抜くことが出来た。
(ところで、何故、黒澤はヒロインの設定が柔なのだろう。ちっとも魅力が無い三條美紀の役に、例えば久我美子のような絶対的な美女を置けば、悲恋ドラマとして哀切も増加したろうに。)
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