[コメント] ブラザーズ・グリム(2005/米=チェコ)
『ドン・キホーテを殺した男』瓦解のトラウマは、それほどまでに深かったのだろうか。テリー・ギリアムが小ぢんまりと創りあげた作品の詰まらなさは、そう思ってしまうほどに深刻だった。同情するなら金をやれ。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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『未来世紀ブラジル』であれ、『バンデットQ』であれ、ギリアムはまさしくホラ吹きミュンヒハウゼン男爵(『バロン』!)よろしく八面六臂の大活躍を見せて、我々を時間のたつのも忘れる冒険へといざなってくれたわけだが、その彼の期待の最新作は、どうにも不満と退屈に満ちた作品に仕上がってしまった。
グリム兄弟そのものを自在にあやつり、「赤頭巾」「白雪姫」「ヘンゼルとグレーテル」などグリム童話を織り込んで再構成する一大ファンタジーとなれば、ギリアムなら嫌でも期待させられて当然なのだが、そのリメイク具合がセコ過ぎる。19世紀という工業社会の萌芽が見え始めていた舞台ゆえか、例えば白雪姫の「鏡の女王」という今回のラスボスの存在にしても、たかだかひとつの村に迷惑をかける程度の存在にしか見えないのだ。その頃のドイツを支配していたフランス軍将軍のほうが大物に見えてしまうのでは、ちっともファンタジーは現実を超えて羽ばたかない。
その他「赤頭巾」「ヘンゼル」「眠れる森の美女」なども、ほんのスパイス同然にしか使われていないのは勿体無い(今までのギリアム作品の大ぶるまいを考えれば、実に彼らしい作り方なのだが…)。
そういうわけで、誰かギリアムのために湯水の如くお金を使わせてやって下さい。
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