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[コメント] チャーリーとチョコレート工場(2005/米=英)

アダルト・チャイルドの自分の親に対する復讐心から生まれた、そのツケが廻ってくる相手は…。子供の心を持つ大人たちへの愛情と皮肉をこめた寓話。共犯者意識のあるオトナはケバケバしい画面の造形美こそを愉しむべし。(付記:バイオレット嬢のもうひとつの顔)
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ウォンカの心ひとつで、招待客の少年たちは次々と酷い目にあわされるが、これはバートンが幼い頃から親しんだ漫画の中に現われる「笑って許せる」罰である。

工場は、ウンパ・ルンパ族が画面狭しと踊り回り、森や滝はチョコレートに溢れ、そしてナッツを選別するリスの部屋から電送装置まで、子供の夢であるお伽話〜未来世界の「夢」でいっぱいだ。だが、それを蹴って老祖父母たちと両親の待つボロい我が家を選ぶ「幸運な」少年に、ウォンカというアダルト・チャイルドは面食らってしまった。その決着はボロ家の家族にウォンカが加わることでつくのだが、これは至極真っ当な「子供オトナよ、責任を持て」ということなのだろう。

これはちょっと、『オトナ帝国の逆襲』に通じるものを感じとらされる。ウォンカは父への愛情の裏返しから事業で成功したのだが、父親への負い目から逃れることはできなかったのだから。そして、その姿は自分という人間にも重なることをバートンはちゃんと判っている。だからこそ、愛すべき仲間たるオトナ観客たちに、極彩色の素晴らしい地獄を見せてくれたのだ。諸君、これだけのことができたとしても、愛すべき人は大切にしろよ、と。もちろんそんなことは百も承知である自立するオトナたちにも、彼はエールとして彼の楽しき悪夢をプレゼントしてくれている。判っているだろうが、これは決して、人生の辛酸をなめたことのないただの子供だけに向けて発信された映画ではない。このチョコレート、なかなかどうして甘いばかりじゃないのである。

(付記)ここではツンケンした記録ホルダー娘を演じたアナソフィア・ロブは、日本ではスクリーンで観られないDVD『きいてほしいの、あたしのこと』で実にしっかりした娘さんを好演しています。必見!

(評価:★4)

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