[コメント] 殺人の追憶(2003/韓国)
映画の冒頭に「未解決事件」であり、「実話」を題材としているとの表記が出る。その点を了解しての鑑賞だったはずが、いつの間にか事件の残虐性から「犯人逮捕」を期待してしまう自分がいた。冤罪とは早期解決を望む僕らの期待が生み出すものかもしれない。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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この映画は、オチを楽しむサスペンスではなく、過程を楽しむサスペンスだと思う。
敢えてコメント欄にネタバレと思われる表記をしたのもそのため。
監督自身もそう望んでの冒頭の表記だと解釈した。
不安定なまま、空に放り出される結末の映画に慣れていない、言い換えれば、自分の推理が当たっているかどうかを楽しんだり、いかに早い段階で結末や犯人がわかったかを競い楽しむサスペンスとは一線を画す映画に慣れていない僕は、この分かりきっていたはずの結末に驚愕し、戦慄した。
犯人は、「普通の人」だったと語る少女。
僕たちは、犯罪者を僕たちが暮らす日常と切り離して考えたいから、つい「異常者」であって欲しいとか、「特別な環境に育った」とか、犯罪者としての「資質」を容疑者に求めてしまう。「普通の人」であっては困るからだ。
つかこうへい氏の「熱海殺人事件」という小説がある。 犯人が余りに普通の人過ぎたため、警察が容疑者を大衆マスコミが望む「資質ある犯罪者」に教育してから世に公表するという物語だったと記憶している。
最後の「彼」のDNAが現場に残されていた精液のDNA鑑定結果と一致していれば・・・と思った観客全ての人の思いが今後も冤罪を招く危険性を幇助する。
国民総裁判員制度の実施が検討されている今、自戒せねばと考えた。
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