[コメント] 恋はデジャ・ブ(1993/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
‘Today is tomorrow!!!’今日は明日だ!(なんという凄いセリフ!)
のっけからなんだが、久々の大当たり。今年は100本程度観て★5はこれでやっと2回目だ。以前からこの作品の評判の良さは知っていたのだが観るチャンスに恵まれなかった。とはいってもマイナーな作品ということもあり監督の名前も知らなかったし、正直そこまで期待は大きくはなかった。
だが、最高だった。野球でいえば下位打者が満塁ホームラン、競馬でいえば大穴の快勝劇、それらをずっと大きく感じ。正に記録には残らないが、記憶には残る映画ではないか!自分にとって隠れた良作中の良作であることに間違いない。いやーほんとにこの作品に出会えて嬉しい!
★★★★★
結論としていうのなら、「恋はデジャ・ブ」の傑作たる所以は以下の2要素に集約される。すなわち
A;主人公が次の日に進めないという設定の面白さ
B;その設定の中での主人公の人間的成長
この2つの要素が信じられないほど巧く絡み合っているからなのだ。
★★★★★
まず前者から。
ストーリーを知らずに観たため、主人公が2月2日から抜け出せなくなるのに初めて気付く場面(序盤)で「これは面白い」と思わず身を乗り出してしまった。他に同様の映画が存在するのかは知らないが、この発想だけでもご飯3杯はいける。一体主人公は何日分2月2日を過ごしたのだろう!? なにしろビル・マーレーが主演だ。結構笑わされたぞ。保険外交員が繰り返し繰り返し出てくるところや思いっきり主人公が無茶する(車で崖からダイブ!見ごたえあり。)場面etc。思い切ってコメディー路線に徹しても、それはそれで充分に楽しい作品に仕上がったことだろう。
この設定にはもう一つ作品の出来に深く寄与する側面がある。それは
《濃厚さ》
である。明確な一続きのストーリーを語る映画と本作とでは決定的に異なる。ここは重要だ。数多の2月2日を多面的に編集したことで作品がとてつもなく濃厚になっている。例えていうのなら、単体としての花の香りと何百種もの香りを混ぜた香水との違いだろうか(どちらもいいのだが)。思い出せないほど非常に多くのパターンを見せることで全体として複雑で分厚い印象を受けた。言い換えれば新鮮さだ。この設定なら常に新鮮さ、目新しさがあり、退屈さの対極に位置する。こういう構成に凝った、編集に力の入った映画は大好きです。
★★★★★
この作品に心酔した決定打は後者だ。つまり主人公の人間的成長。単なる面白いコメディから更にさらに一歩上の段階に作品を高めている。これはいうなればメッセージだ。一言でいうと
《あなたは毎日を同じ日の繰り返しだと思っていませんか?そうじゃない。あなた次第でたったの一日でさえどこまででも、本当にどこまででも変化させることが出来るんだよ。》
ここなのだ。
同じ日から一向に抜け出せないと知り、次第にいいかげんに、捨て鉢になっていく主人公。「特権」を利用して悪事を働いたり、預言者めいたりする。仕事への姿勢は思いっきりいいかげんになる。視点を変えればこれは正に俺そのものではないか!いや、他の人も多かれ少なかれ同じようなものかもしれない。明日も明後日も同じことをしなければならないのだから。今日ぐらいいいだろう。明日になればちゃんとやるよ・・・。
でもそうじゃない。
一日は自分が作るものなのだ。たとえ明日がこないとしても、その日を最大限に充実させる。たとえ他人が全てを忘れてしまうとしても、「特権」を利用し親切に尽くす。保険外交員を抱きしめてあげるシーンなんか一年に数回ほどしか味わうことのない心の揺さぶりだった。それは主人公が気付いたからなのだ。 日付が変わらないなら、自分が変わればいい。
同じ日から抜け出せなくても、決して無駄なことはない。日にちは同じでも、自分は同じではない。自分次第で周囲なぞいくらでも変わる。そこがとても分りやすく描かれている。これは子供でも理解できるのではないだろうか?もちろん最も象徴的なのがアンディ・マクダウェルの反応だ。彼女は鼻にもかけない態度にもなるし、ラストシーンのようにもなる。結末は解りきっていたものの、やっぱり最高のプレゼントだった。
2月3日からも主人公は一日を大事にして生きていくことだろう。
以上のような意味でこの寓話は実に普遍的だ。主人公は2月2日に囚われているが、我々もまた2月2日に囚われているのではないだろうか。そこにまず認識させられたし、どうやって抜け出すのかも教えてもらった。
●今日を充実させてこそ、明日がある。今日の大切さに気付かぬ者は、明日の大切さにも気付かないだろう。主人公に明日は着たのだ。一日の大切さをここまで深く描いた映画はまずない。「恋はデジャ・ブ」はとてつもなくポジティヴで幸せな映画だ。
‘Today is tomorrow!!!’
#追記;6時の目覚まし代わりのラジオについての豆知識みたいなもの
この映画の中で繰り返し流れるラジオの音楽。何度も聞いているうちに、耳にこびりついてしまい、忘れられない曲になった。タイトルが分らなかったので長い間自分の中で謎の曲扱いだったのだが、ついに判明。この間テレビを見ていたら偶然分った。
曲名;「I got you,Babe」
歌手;ソニー&シェール
つまりアカデミー賞も取ったシェールが歌っていたんですね。但し映画内で聞こえるのは彼女のパートではないようです。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (5 人) | [*] [*] [*] [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。