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[コメント] エル・マリアッチ(1992/米)

低予算をはねとばす魅力。それは“色気”という言葉で表せられる。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 現時点では三部作となる「エル・マリアッチ」シリーズの記念すべき第1作。この作品で監督として認められることになるロドリゲスだが、この作品は殆ど自主制作で、フィルムの安いメキシコを舞台に、なんと14日、7千ドルで作ってしまう。

 確かに安っぽい作品であることは事実だ。だが、これが面白くないかと言われるとさにあらず。低予算をアイディアと演出で見事にカバーしている。ここで冴える演出こそがロドリゲスの魅力であり、メジャーとなっても、この姿勢が貫かれているからこそ、今も第一線で活躍できるんだろう。

 ここでの演出の上手さとは、私なりに言わせていただければ、それは色気にあったのだと思える。

 主人公のマリアッチは最初から人殺しではない。ギター弾きで生計を立てることに夢を持っている、普通の少年に過ぎなかった。ただし彼自身もギターだけで食っていけるとは思ってない節があり、下積みの間はヒモになることも別段抵抗無いみたい。自らのセックス・アピールを利用するのも才能だし、その演出もふんだんになされている。彼を撮るカメラ・アングル、カメラ・ワーク共に、最大限色気を演出しようとしている。まだ成長しきってないあどけない表情での流し目が又良いのよ。

 ここでの彼の色気とは、非常に危ういバランスの上に立っている。全然世間を知らない。粋がって背伸びをしているが、観てるこっちとしては、その一生懸命さがほほえましいし、その危うさが色気に転換してるという、本当に見事な演出だった。

 更にここにラテン系美女のゴメス扮するドミノが絡むことで、色っぽさは最高になる。男も女もフェロモン全開。これがラテンというものか!

 本作の売りは容赦のない暴力となるが、その中心があどけない少年を中心に撮ることで、その危うさと可愛さが強調される。なんだか、銃撃戦で色っぽさを感じてしまうのだが(異常か?)。まるでペキンパーを思わせる銃撃戦の演出とかも、一見の価値はあるだろう。いかに安く上げながら、見所を作るか。特に映像を勉強したいと思ってる人にはお勧めしたい。

 しかもラスト。愛人のドミノがあっけなく殺されてしまい、更にマリアッチとして生きるなら命綱と言える手を打ち抜かれ、苦しむマリアッチの目が凄い。今までのあどけなさはどこへやら。憎しみに燃えるそれはまさしく非情な牡の目だった。最後に寂しそうに、それでも決然として町を去る演出も良いよ。

 …続編作られるのは当然だろうな。確かに出来で言えば『デスペラート』(1995)の方が遙かに上行ってるけど、これはこれで監督の才能って奴を思いっきり見せつけてくれた。

(評価:★4)

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