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[コメント] 赤目四十八瀧心中未遂(2003/日)

堕ちることが使命であるかのように負の方向に向かう大西滝次郎の強い目の光。黄泉との境界を越えまいとふらふらと揺れる寺島しのぶの身のこなし。大楠道代が、内田裕也が、新井浩文が、人が人として存在する重さと悲しみを体現する。
ぽんしゅう

マゾヒスティックな堕落という自傷行為の果てに、生島が出会った男達はどうしようもなく男であり、女達は限りなく女であった。奈落から導き出され四十八瀧を“昇る”綾との彷徨の果てですら、生島は現実の世界を生きぬくすべを持ち得ないのだろう。何という空虚。

「絶望とは自己自身を食い尽くすことにほかならない。もっともそれは自己自身を食い尽くそうとする情熱だけであって、自己自身を食い尽くす力は持っていない」というキルケゴールの言葉を想起する。

荒戸源次郎監督は、笠松則通のカメラと千野秀一の音楽を駆使してこの空虚の濃さと重みという矛盾の映像化に成功した。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ナム太郎[*] 町田[*]

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