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[コメント] 赤目四十八瀧心中未遂(2003/日)

「考えはしたが何もしなかった」これだけでスコーンと一発。体ごと持っていかれた。スクリーンの中に。アマガサキのあのアパートの一室に。
町田

破滅を志向しながらも自分が自分であることを最後まで捨て去れずにいる脆弱なブンガクセイネン生島与一。に俺は完全に同化してしまった。(それだけに「あんた、目ェだけで女楽しむの止めなさい」というアヤちゃんのこの言葉には本当にドキリとさせられた。)

車谷長吉の物語も然ることながら映画としても素晴らしい。特に前半部。常に意外性に充ちた画面。その殆どが、’80年代に荒戸自身が蘇生し普及させた大正モダニズム・超現実的表現に頼ったものでなく、人物の顔や町並み、建造物、仏像といったあるがままの「風景」を繋げることで成立しているのだから二重の驚きだ。

配役も申し分ない。寺島しのぶは確かに原作のイメージとは違うし、美人でもないのだが、現在の若手女優で彼女ほど「生の内容物。」を感じさせる人は稀であろうから俺は支持したい。これが例えば常葉貴子などだったらこの映画は成立しないだろう。

新人大西滝次郎の独特の雰囲気も良い。鋭さと鈍さを併せ持ったこれも得がたい素材と云える。肉を持ってくるコウちゃんも良かったな。

ベテラン陣はもう凄まじい。そこに居ること自体が既に映画的だ。大楠道代内田裕也。股間をまさぐる麿赤兒は少し作為的過ぎたけれども。

絵沢萠子が山本線の駅名を云う場面は映画のオリジナルだが単なる「遊び」を超えた強い印象を残す。可笑しさの中に哀切さがあった。

5点を付けたがこれは完璧という意味ではない。滝に入る後半はやや冗漫、ラストシーンも衝撃的というほどのものではなかった。しかし、また見たい、何度も見たいという衝動に駆られる映画である。ということで年が明けたらまた行ってきます。

(評価:★5)

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