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[コメント] あずみ(2003/日)

日本の辛口批評家が酷評し、ハリウッドが「金」を出したがる才能とは?・・なんて構えて観ると、そんなこたぁどうでも良くなる面白さ。だけどちょっと悪ノリし過ぎは批評家たちの神経を逆撫でします。
sawa:38

その前に、どうしても言っておきたいのが、斬られ役の役者たちの出色の演技だ。この作品の殺陣の良さ(いろいろ批判はあるようですが、私的には素晴らしかった)の源は、無名の斬られ役たちの迫真の演技にあった。

今回の斬られ役は忍者・雑兵・野盗たちだが、特に野盗を演ずる何人かの壮絶な死に様は「美しかった」。苦痛と無念さと驚きといった表情を一瞬、ほんの一瞬のカットの隅っこで主役をバリバリ喰うような一世一代の芝居をやらかしていた。ああいった名も知れぬ役者たちの芝居は殺陣を引き立たせる。いやぁ、本当にいいもん見せてもらったと思います。

そしてその殺陣のシーンにおいて特に際立ったのが、前半の影武者を襲撃するシーンでした。監督はここで異常な数とも思えるカット割りを断行。たったひとつの動作でさえ複数のカットで割る。

刀を振り下ろす・振り向く・・・などの簡単な一秒にも満たない動作を、「あえて」複数の角度を変えたカットで繋ぎ合わせたのだ。この異常さ。

それは言葉を換えれば、主役の下手な殺陣を上手に見せる為の工夫であったのかもしれないが、それがまた絶妙のハイテンションとなってアクションシーンのレベルを引き上げた。この監督のこたぁ詳しくは知らないけれど、あのハリウッドが是非にと金を出したがるのは、この辺の感覚(才能)なのかなぁと納得する。他の監督が撮れば「普通に」編集したであろうフィルムを、ああも自在に(というか天衣無縫に)繋ぎあわせる独断専横振りは近頃の「演出」では類い稀と言っても過言ではないだろう。

・・・と、ベタ誉めし過ぎるのもなんなんですが、皆さんが仰るようにちょっとだけ悪ノリが過ぎたのも確かだろう。CGやら大予算やらという「おもちゃ」を得た嬉しさが随所に出てたのは確かに痛かった。また、ちょっとばかし漫画チックになり過ぎたのも残念だった。だけれどもそんな事を差し引いても、面白かった記憶は消せない。現代風の言葉使いや茶髪やらの「ウソ」は「映画的ウソ」という事で全く問題にすら感じはしなかった。

「本当にこれでいいんですか?」と聞かれれば、「いいんです!」と自信を持って答えたい。この監督、次回作は「金」にも慣れたことだろうから、多少は落ち着いた作風になるんじゃないかと期待してみたい。凄い甘めの点数だと思うが、日本期待のエースである。これぐらいいいじゃないだろうか・・・

(評価:★4)

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