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[あらすじ] 亡国のイージス(2005/日)

国防の楯となる海上自衛隊イージス艦のいそかぜへ某国の策謀により、毒ガス兵器”グッソー”が持ち込まれた。これの使用を防ぐために、日本の秘密諜報組織ダイスは工作員を乗船させるものの、いそかぜは自衛隊の意思を離れ、東京は未曾有の危機に直面する。守るべき国の形を見失った亡国の楯(イージス)が日本の現状を憂い、自衛隊の有り方を問う、新進作家福井晴敏氏の3つ目の映画化作。 映画を楽しむための原作からの補完解説→
アルシュ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけの解説です。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







この映画をそれなりに楽しむポイントを記していきます。 原作のネタばれも多いのでご注意下さい。

−−−−− まずは用語説明 −−−−−−

■GUSOU(グッソー)

沖縄伊良部島に伝わる民話に出てくる死者の国「後生(ぐそう)」からアメリカ軍が命名。完全に国際条約に違反する化学兵器。元々は新エネルギー開発中に出来たガスで石油よりはるかに効率的で管理次第では原子力よりはるかに安全性が高い。だが、その研究の途中でたまたま生まれてしまったもの。究極の戦略兵器になるため、米軍があきらめ切れずに沖縄辺野古基地地下に貯蔵していた。

■Defence Agency Information Service(ダイス)

防衛庁情報局。自衛隊市ヶ谷駐屯地の地下6階に作られた「国益・治安を侵害する事態」に対して「国家公安委員会及び情報活動監視委員会が認める範囲内」で「超法規的対処活動」が認められている場所。

■FTG = Fleet Training Group

海上訓練指導隊

−−−−− 続いて肝心な登場人物の心の部分 −−−−−

■ホ・ヨンファの意図

北朝鮮(映画ではあえて国名は伏せていました)本国の意思で動いているのではなく、現体制が消えることを願っての行動。日本で要求が通ったあとは、惨めったらしく、見栄っ張りの自国の中核ピョンヤンをグッソーで討ち、自分達によって決起を促そうと考えていた。

■宮津副長の反乱の動機

原作では宮津はミサイル護衛艦(大規模改修によってミニイージスシステムを取り入れたものでイージス艦ではない)いそかぜの艦長。

国を憂いて宮津学校の生徒を引き連れて反乱を起こす。その実、息子を国に謀殺された私怨の方が大きい。

■如月行の責任感について

彼がダイスの工作員になったのは、映画でも多少は語られていたが、酒と女に溺れ、その上、親しんでいた祖父を密殺した父親が憎く殺害を決意した。ダイスは予め目をつけていた彼を拘束し(路上で拘束する場面のエージェントって黒スーツ、黒ネクタイが如何にもね)、その後、工作員として厳しい訓練を積む。警察に突き出されるか、それとも工作員として使命を全うするかを選択させられる。いそかぜと共に果てようともミッション遂行を厳命されているからだ。

■チェ・ジョンヒについて

彼女は生来の素質を見込まれて、自分の意思とは無関係に北朝鮮で殺人兵器として厳しい訓練を積んできた。

映画では潜水艦からいそかぜに送り込まれたわけだが、原作では旅客機を墜落させ脱出。グッソーとともに、墜落現場の海上に来たいそかぜに生存者として救助される。・・・実はグッソーを秘密裏にいそかぜに届けるというのがホ・ヨンファの思惑。

彼女とヨンファは、偵察局長に育てられた血の繋がっている兄妹以上の兄妹とも言える。また、お互いに心を通わせていた部分もあり、ヨンファは革命成立後には彼女を”王”にする思惑もあった。

ただし、ジョンヒは強いヨンファに恋心以上のものを持っていたので、心の弱さを表出しはじめたヨンファから、自分と同じ匂いのする如月に魅かれ始めたのが、海中でのキスの意味。

■ヨンファや宮津らの要求をすぐに呑めなかった理由。

3つあった要求のうちの2つ。「1、グッソーの製造と隠蔽、漏出事故解決の為の辺野古ディストラクションの真相公開 2、大学生を密殺した秘密諜報機関ダイスの存在の公表」

これらが全世界に向けて公表されると、自国はもちろん世界中がひっくり返る。

日本とアメリカの信用は失墜して、両国現政権の崩壊はもちろん、そのマイナス要因が起因してアメリカの国力が衰退し、反米の姿勢をとる中東の国や北朝鮮で軍事クーデターが起きる。世界各国が戦乱の淵に立たされ、対北対策を名目に日本はアメリカに軍事再占領に近い形が取られることも想定される。

この様に、簡単には要求を呑めない訳で、力ずくで叛乱を鎮めようと画策したわけです。

■ちなみに原作には、これ以上は無いと言うオチがあります。

グッソーの入っているネスト(あのシリンダーの様なもの)はダミーで、ヨンファが開放したものの何事も起きなかった。米軍は盗まれたのがダミーだという事実は知っていた。

ヨンファは北朝鮮の時代からの人に対する恨みによって、生きてきたといっても過言ではない。祖国の再建という高尚な目的よりも、人を殺める快感に支配されている男であり、原作では甲板に立つホイップアンテナに串刺しになるという劇的な最期が用意されています。

福井晴敏氏は「映画として画になる場面」を小説できちんと用意していたのですが・・・。

(評価:★3)

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