★5 | 奇跡(1955/デンマーク) | 卑小で欠落の多い生き物ゆえにこそ訪れる恩寵。神の息遣いが伝わる宗教劇の傑作。登場人物の心の中の嵐が、粛々としたリズムの中で手に取るようにわかる。台詞一つ一つの駆動力の高さが桁違い。緩やかなパンニング、禁欲的なミディアムショット、固定焦点距離の絵作りなのにシーケンス転換は驚異的に鮮やか。 | [投票(2)] |
★5 | ガートルード(1964/デンマーク) | 映画の殻をやすやすと突き破り、60年経った今なお今日性を保つ傑作。俳優の出入りや、言葉の応酬、意表をつくストーリー展開あらゆる視点で凡百の映画がたちうちできない緊密度を有する。なおかつ、画面は1930年代の古風さも併せ持つ。主人公の確信に満ちたビジョンと自律性、一貫性で、人物造形の金字塔を打ち立てた。 | [投票(2)] |
★4 | 怒りの日(1943/デンマーク) | 魔女という徴(しるし)が機能するシステムが恐ろしい。司祭の家の室内は石牢のように抑圧的だ。各人の部屋のドアは決して同時には開かれない。姑が消えると嫁が現れ、父が引っ込むと息子が登場する。一方で燃え盛るような青草に満ちた屋外のエロチックさ。こうした対比を静謐なトーンに収めて見せる腕の冴えに唸らされた。 | [投票(3)] |
★5 | 吸血鬼(1932/独=仏) | 傑作。正体不明の農夫の持つ大鎌のイメージが全編を支配する。土地と土地の連携を断ち切り、人と人との情報交換を断ち切り、人体とその影とを断ち切る。あらゆるものから遮断された、狂った世界としてクルタンピエール村がほのじろく浮かび上がる。
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★4 | 裁かるるジャンヌ(1928/仏) | 「信念」という奴は、往々にしてその信念を持った当人を内側から蝕みもするし、人を人から隔てもするし、人の自由を一蹴しもする。そうした「信念」の危険な性質を、彫像のように強い顔と顔のアップのつなぎで表現してしまった前衛の傑作。 | [投票(2)] |