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[コメント] マーシャル・ロー(1998/米)

FBI捜査官、CIA工作指揮官、陸軍将軍。3人が見せる、 「国家の名の下に武器を持つ者」たちのあり方。
あまでうす

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 「人権」「正義」「自由・平等」「国家」...そういうモノが 本当の意味で実存するか? 難しいところ。

 NOと言い切ってしまうと夢も希望もないし、YESと信 じるとちょっと甘い考えだと言わざるをえない。矛盾である。

 1つの国家の中でもこの矛盾はそこらじゅうにある。同胞で あるはずが、全然違う考えで国家に従事してる。特にアメリカ は顕著なんだろう。

 「警官」と「軍人」と「諜報員」がこの映画には登場する。 みんな国益と国民を護るために戦う人たちで、同じように見える。 でも、全然違っている。戦う相手が全然違う。

 警官が戦うのは「犯罪者」。軍人は「敵」。諜報員は「障害」だ。 警官は法に反する行為を憎み、軍人は味方を護ることのみを考え、 諜報員は命令を果たすのがすべて。軍人にとっての味方は警官にとっての 犯罪者になりえるし、警官にとっての善良な市民が諜報員にとっては 殺すべき障害になりえる。

 そんなあやふやな"敵・味方"に別れて、彼らは戦っている。戦う意味 はあやふやだろうとも、飛び交う銃弾はホンモノだ。信じるしかない。 自分の正義を。

 この映画ではどうやら”警官”という立場のワシントンが主役のようだ。。 確かに、私は彼に一番感情移入ができた。だって、外国人だろうが スパイだろうがテロリストだろうが、裸で椅子に縛られた無力な人 間が目の前で拷問されるのを黙って見られるはずがない。でも、法の 正義なんてのが本当にありえるんかな? 「アラーは偉大なり」という アネット・ベニングの最期のセリフが、私の正義感をふと揺らがせる。

 この映画はラスト、解放されるアラブ系の人たちが家族と再会する シーンで締めくくられる。そこには正義はない。あるのは、家族を 思いやる愛情だけ。このあやふやな世界で、唯一信じられるかもしれない モノが、確かにそこにある。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)けにろん[*] kenjiban[*] G31[*]

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