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[コメント] 白痴(1951/日)

濃縮され過ぎた表現主義系の演技と映像とが、力みすぎて漏れてしまった屁のようで、笑いをも招きかねない。060313
しど

編集されて本来のリズムが失われているのか、力んだ部分のみが抑揚も無く繋がれていて、テンションの高さにも慣れちゃうと退屈な時間が永遠に続くようで苦痛だった。両手を頬に当てて涙を流すなんて漫画みたいな演技が、この時代にはどう受け取られていたのかは定かではないが、今見てしまうと「ええ?ありえへんわ、こんなん」と笑ってしまう。

もともと、活劇以外での黒澤の人物演出は好きではない。ポストモダンとしてのドラマ解体コントを90年代にテレビで散々見てしまっているので、「静」よりも「動」ばかりが強調され、時には実際に手がわなわな動いていたりする黒澤の古い演出を見ると、ついつい「ここ、笑うところ?」と思ってしまうのである。何かっていうと、すぐ取り乱すし。

惜しむらくは完全版ではないという点ではあるが、同様に切り刻まれたシュトロハイム監督の『グリード』(9時間半→4時間→2時間)が、まさにリアルタイム表現主義の時代にあって、幻想的な映像が「欲望(グリード)」に直結する、端折られた部分を感じさせない迫力を持っていたのと対照的でもある。

(評価:★2)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)けにろん[*] モノリス砥石[*] ina

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