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[コメント] ガンパウダー・ミルクシェイク(2021/仏=独=米)

道具としてのフェミニズム。楽しいけど、何か本質がズレてる気もする。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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楽しく観ましたよ。主人公絶対死なない系の安心感。楽しく観たんですけどね。「女殺し屋もの」好きなんです。だから観に行ったんですけどね。

個人的な好みを言えば、「殺し屋」って「バトル」じゃないんだよなあ。

たしかに『キック・アス』のバトル美少女ヒット・ガールは文字通り俺の心にヒットしたんですが、あれは「殺し屋」じゃなくて「ヒーロー」だからね。クロエちゃんの魅力とマシュー・ヴォーンの力量に負うところも大きかったし。実際、監督が代わった続編『ジャスティス・フォーエバー』は何も覚えてない。クロエちゃんが可愛かったことしか覚えてない。

最後はバトルに至るとしても、「暗殺の緊迫感」って必要だと思うんです。その点、『ニキータ』は秀逸だった。あれでリュック・ベッソンを買いかぶっちゃったんだ。『LUCY ルーシー』はヒドかったぞ、ベッソン。マジでヒドかったぞ。そういうわけでこの映画、「緊迫感」はないんですよね。そもそも暗殺もしないし。

あと、「女殺し屋」は「哀しい過去」を背負っているというパターンもありますね。『ニキータ』もそうですし、『ソルト』なんかも典型例。ジョー・ライトの『ハンナ』なんてのも観たな。あとインド映画『マッリの種』(ビデオ販売時のタイトルは『ザ・テロリスト 少女戦士マッリ』)なんてのも観た。この『ガンパウダー〜』は、「母に捨てられた」という一見「哀しい過去」を背負っているんだけど、それは「母娘のシスターフット」の伏線でしかない。

あるいは「殺す目的」に「個人的な理由」が加わると燃えるんですけどね。特に「復讐」。復讐は爆燃え。『キル・ビル』とかね。『親切なクムジャさん』とかね。ジョディ・フォスター主演の『ブレイブ・ワン』なんてのもあったな。そう考えるとこの映画、「少女を助ける」ことが目的で、本来は「殺す」ことが目的じゃないんですよね。まあ、原型は『グロリア』なのでしょう。でもジーナ・ローランズおばさんは「防衛」のために銃を抜くのであって、「殺し屋」じゃないんだな。

この映画の監督が、その手の映画の「通」だというので、こっちも意地になって「自慢」しましたけどね。なにか本質がズレてる気がするんです。

「フェミニズム」に関しても同様です。『チャーリーズ・エンジェル』的な女性の「性」を売りにしない(男女間の恋愛要素もない)女性アクションは、今時だし立派だと思いますが、フェミニズムの扱いは、本質ではなく、娯楽の「道具」にすぎない。「俺はフェミニストだ」という敵のボスは女系家族で孤立しているという「ネタ」に過ぎないし、ヴァージニア・ウルフをはじめ名を挙げる本の作家が女性ばかり(だと思う)のだって、好意的に見れば暗喩だけど、物語の本質に関わるわけじゃない。「組織」を「男社会」に見立てて、「(男は)都合のいいようにルールを変える」と言い、それと「対等に戦う」ことがこの映画の根本姿勢。

仕方がないよね、監督が描きたいのは「女性のアクション」だから。男性がやるアクションを「女性がやる」という趣向の映画だから。「女性だからできる戦い方」「女性にしかできない戦い方」というわけではない。少しはそういう「知恵」があっても良かったと思うんですよね。「思い付いた」って、ウェイトレスに扮装する程度かいっ!

(2022.03.21 kino cinéma立川郄島屋SC館にて鑑賞にて鑑賞)

(評価:★3)

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