たけし映画にとってヤクザ社会って、サラリーマン社会の象徴なんだろうと思うわけです。 身勝手な上司とルールを知らない若い部下、一向に上向かない景気に挟まれて、貧乏くじを引く中間管理職が右往左往する。 その中で、主人公は自分の核を見つめ、行き場をなくして暴発する。これが基本のプロットだと。 （※鮮烈な暴発っぷりは「ソナチネ」にて極限にまで研ぎ澄まされ、たけし自身もバイク事故と云う形で暴発する）

しかしながら、前作アウトレイジに於いては「登場人物全員悪人」の馬鹿らしいスローガンの元、「どいつもこいつもどうしようもなくて、オイラ頭痛くなっちゃうよ」とでも言わんばかりに全てを俯瞰した上で、身も蓋もない非道な男達の行き道を、ある種痛快に描いて見せた。無駄を排し、端的に語るスタイル。まさにコントの至芸。凄惨なバイオレンスも往年のツービートの毒舌漫才みたいで本当に痛快だった。人間の空っぽさを見事に描き出してたと思う。

その中で、一人だけ全体の流れにそぐわないウェットなキャラが中野英雄演じる木村であった訳です。彼はドライで突き抜けた登場人物達の引き立て得役として、異様なしつこさでその対角線上にある情念を演じて映画のアクセントとなり、散々それをコケにするたけし扮する大友を刺してオチとしても機能した。

で、続編の今作、全てをひっくり返すという作戦。 これも前作同様、たけし一流のストーリーテリングだったと思う。 しかしながら、結果として、どうしようもない男達のどうしようもなさがドライブした先に浮き彫りになった人間の空虚さを笑い飛ばす痛快さは失われちゃいましたね。 それがアウトレイジの眼目だったと思うんですが・・・。 では、生死をかけたコントの反対にあるモノは何か？ 諦めの悪い不確定な・・・言葉にし辛い重さ。描き出すのは同じ人間の空洞性だとしても・・・それは石井隆のフィールドだよなあと。

石井隆がどうこうじゃないですよ。嫌いでもありません。 でも、北野武には切れ味鋭い批評家であって欲しい。