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[コメント] みじかくも美しく燃え(1967/スウェーデン)

この兵役拒否の「失楽園」はヒッピー文化の反映に違いなく、ピア・デゲルマルクの綱渡りは『ピクニック』のシルヴイア・バタイユを想起させる鮮やかさ。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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あの樹の間に張られた綱がなぜずり落ちないのかはイマイチ解せないが。ここは妖精の超能力だから疑問は野暮なのだろう。

大きくは『男と女』(66)の影響下にあるソフトな映画表現と云っていいのだろうか。スゥエーデン・ポルノというのは有名で、本作と似ているのかどうなのか、私はまるで知らないが、モーツアルト多用の艶めかしさは独特の表現があった。撮影は魅力的。逃亡を続けているのに同じ木陰が反復されるのが、行場なしのどん底を示して秀逸。海のたっぷりした海水のイメージも優れている。

冒頭、字幕で心中事件の説明があり、ファーストカットで男女が倒れているから、ああ心中なんだと思わせておいて、ふたりが起き上がり笑い転げる、というユーモラスな導入が感じよい。デゲルマルクが習った編み物をずっと続けているのは、逃亡の非日常に日常を持ちこもうとする身振りのように見える。ラストは哀しい銃声2発のストップモーション(ストップモーションは当時最先端技術で、これで終わる映画は多い、と聞いたことがある。『レット・イット・ビー』とか)。

兵役拒否の逃亡、「戦争は肉の焼ける臭いよ」というデゲルマルクの幼時の回想、そして食えない苦しみは、当時のピッピ―的認識と重なるのだろう。手相に国境をなぞらえる件もあったが、しかしなぜデンマークへの逃亡なんだろう。たぶんスゥエーデンとは国境の低い関係なのだろう。

(評価:★4)

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