[コメント] 風の電話(2020/日)
点でしか存在しないいろんな社会的不幸を虚構で繋げて見せ、それこそが必要なことなのだと呟く森崎東の方法論。カウリスマキやハネケとも通底する主題だが剥き出しの率直さで語り切るのが好感。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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沈んだハルモトーラ世里奈の造形の強度が凄まじい。アイドルみたいな娘なのに、この造形が最後までブレないのがいい。へたり込んで暴れて倒れ、助けられた三浦友和に自殺するなよと送られ、福島から脱出した同じ境遇の西島秀俊と自動車で放浪、クルド人のコミュニティに立ち寄る件など、社会的弱者を集合させる森崎東の方法論がここではスマートに踏襲されている。
西島はハルを連れて福島、彼の荒れ果てた自宅、その庭でハルは家族と再会し、抱きしめ、弟のボール遊びに加わるが、拾ったボールは萎んでおり、振り向くと家族はいない。そして彼女の自宅、雨水が溜り放題になった基礎だけの家に入りただいまと繰り返して、また泣き座り込み仰向けになる。倒れるのが彼女の抵抗の姿勢なのだった。この件は『ノスタルジア』が想起される。
「風の電話」を救いとし、自殺したら死んだ者たちも消えてしまう、死んだ者を覚えているために生き延びよう、生きているからみんなのことを思い出せる、という絞り出したような倫理観を映画は結語としている。いいフレーズだと思う。
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