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[コメント] AKIRA(1988/日)

この作者予言者か。東京崩壊を原発事故と解せば随分ずれたが的中。学生運動はゲバ棒は持たないが起きている。凄いのは1年違いの東京オリンピック。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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作中ではオリンピックは2019年。うるう年開催を知らなかったらしい。

しかし本筋の似非科学=宗教的想像力はオウム以前の、世界の崩壊を倒錯的に愉しませる描写群は阪神大震災以前のカタルシス発散、という気が強くする。遠目に見て喜ぶ輩は9.11時のシュトックハウゼンみたいに芸術だと云っておれば済むが、当事者は後片付けに大変なんだぞ。好意的に見れば、バブル真っただ中で日本人好みの終末論を浮き彫りにした、となるのだろうが、そんな空っぽの褒め言葉より単に子供の妄想と云った方が当たっているだろう。あるいはオウム流行の空気を蔓延させた感性の一部と云うべきか。こういうヲタク映画の引きこもり系の隠微で精液臭い悦楽は気持ちが悪い。さらに軍事独裁が敷かれる展開には呆れた。この大臣だけは死んでほしかったがそうしないのは作者がどっち向いて映画つくっているのかよく判る処だ。これも予言だろうか。

何やらエネルギー革命のことらしく「いまの僕たちには大き過ぎたんだ」「でもいつかは私たちにも」「もう始まっているからね」とくる。原発推進派の科学妄信みたいなものだが、別に作者は真剣ではなく格好よさげで空疎な物語の締めくくりでしかないのだろう。公開当時、周囲の評は「何も後に残らないが、観ているうちは面白い」が大勢を占めた。これが当時の表層批評と奇妙にもマッチングして視覚の快楽とか云う輩もいた。しかし今観れば何のことはない、崩壊感覚を愉しむ視覚娯楽に過ぎない。巨大化する熊のぬいぐるみはアルコール中毒患者によくある症状である。

作画は老人が下手(これは作風正反対の宮崎駿にもなぜか共通している)。ヒーローとヒロインが同じ顔しているので時々混乱させられるが何か意味があるのか絵が下手なだけか。映像は『ブレードランナー』のパクリ他平凡なばかり。時々挟まれるヒーローの冗談は退屈至極。そもそもあんな髪型の暴走族なんていないよ。

(評価:★1)

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