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[コメント] 初恋(2019/日)

死んだつもりで生きるより、生きるために生きる方が難しい。怖いだろ、でもそれが生なんだぜ。走り抜けろ!・・・って何マジになってるの三池さん、という驚きと喜び。少なくとも私には若干照れの入っただけのマジ映画。
DSCH

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







遅れてやってくる余命宣告撤回について、たしかにギャグなんだけど、ダメな時はただギャグでしかなかったものが、窪田くんの心情をうまく揺さぶるよいタイミング、道具になっていて素晴らしい。もとより死ぬつもりで何もかも早晩失うことが自明だったからの振る舞いが、アレがあることで死地におきながら眼前に急激に世界と可能性が反転して広がる。その目の前に小西さんがいるわけで、突然「死にたくない」「生きたい」という気持ちに鮮やかに逆転する。恐怖が生まれる。生きたいからこその恐怖なのだ。感情が動き始める。最後ではない、「ここからの恋」が始まる。ここでぶるぶる震える窪田くんの演技(子どもみたいな幼さに戻るのだが、まさに新しく生まれるのだから、これは的確だと思うのだ)がその後も素晴らしいし、人生はままならないという皮肉さと、心情の反転を被せる脚本に感心。中村雅の脚本をいいと思ったのは初めて。これらを一夜、夜から夜明けに至る時制に託すのも、ベタながら正解だ。夜がしっかり暗く、街が汚いのもいい。

今回マジだなと思ったのは、すごく個人的な印象の話をすると、刎ね飛ばされた染谷くんの首について、もしかしたら喋ったり笑ったりするんじゃないか、と思ったが、それをしなかったため。最近の作風だとやりかねない気がしたのだが、三池さんなりの一線を引いた作りを感じたのである。暴力の果てにギャグを置く世界観はまったく妥当で、匙加減も文句ない。

ベッキーもいいけど内野さんの殺陣が格好良い。あんな抜刀シーンは初めて観た。このへんはやっぱり三池さんのセンスいいんだよなあ。小西さんは金的一発があるとはいえ、ちょっと受け身過ぎるな、と思わせた先が良く、クスリをばら撒いて決意を示すシーンや、更生という闘いを窪田くんのファイトシーンと重ねるシーンがいい。共闘と連帯のイメージ。

(評価:★4)

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