コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 魔女の宅急便(1989/日)

冒頭、キキの一見乱暴な箒術は母から「相変わらず下手ね!」との評を貰うが、「才能」という「可能性」を持て余して天然で暴れ回っていると観るのが正しいだろう。飛ぶシーンはキキの心象を反映してそれ自体のアクションがいちいち超素晴らしいが、対比的に「飛ばない」シーンが優れているから、双方が輝きを増す。一人で歩く岸壁の砂利道、ウルスラの家を訪れる際に乗る車のヒリヒリした違和感に「重力」を感じさせる。
DSCH

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







こんなにいい映画だったんだ、と素直に思ったのは、このしょっぱさが分かる程度には人生経験を踏んだおじさんになったからなのだろうと思う。私は趣味で音楽をやっているけれど、この趣味に関して日々考えていることを踏まえて観ていると、ウルスラが山小屋で語る「好きだからこそ嫌いにもなることがある」とか、いちいち身につまされるし、「飛べない」時のキキの心象が手に取るようにわかる。駄目なときは楽器が重く感じるもの。「何かが好き」というのは本当に難儀なことだ。難儀だからこそ素晴らしいのだろうけど(←つくづくマゾだと思う)。

冒頭の箒とは違う意味で制御のきかないデッキブラシの飛行なんて、涙なしに観られない(少しずつ絞られ、限定されていく「理想」と「可能性」。しかしそこに注力していくことの大事さ)。ラストのクライシスと突破後の祝祭感には色々な見方があるようだけど、私は全面的に支持したい。ジジの言葉が戻らないのは強烈にしょっぱいが、この映画らしい切なさであると思う。

荒井(ここ重要)由美は反則的にいい。

余談だが、欧米版ではデッキブラシの飛翔シーンの一部にBGMが入っている。バッカじゃなかろか。

※ 冒頭に「重力」と述べましたが、『もののけ姫』はかなりの勢いで「重力」の映画でした。『風立ちぬ』はまだ観ていません。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (3 人)Orpheus ぽんしゅう[*] 緑雨[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。