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[コメント] フィッシャー・キング(1991/米)

孤独のように見えて全然孤独じゃない男同士の似非友情物語が鼻白むSO-SO作品
junojuna

セントラル・パークで語り合う2人の雰囲気は良かった。だがこの映画が向かっている友情による人間性の復権というテーマの訴求は、人物配置の不味さから到底達し得ない結果となった。勝手な見方かとは思うが、こうした敗者の姿を描く映画はこれまでに、ジェリー・シャッツバーグの『スケアクロウ』、ジョン・シュレシンジャーの『真夜中のカーボーイ』など、映画史に残る傑作が生まれているのだが、本作の時代背景ではそれが機能しなかったのかギリアムの限界か、どこか敗者を見つめる眼差しが甘っちょろく物足りないのだ。まずドラマツルギー上の欠陥は、ジェフ・ブリッジス演じるジャックにはマーセデス・ルール演じるアンという庇護者がいて、彼がどんなに落伍者であってもその時点で窮地とは思われない。またロビン・ウイリアムズ演じるところのバリーの悲惨さを、過去の出来事で語りすぎ、またアマンダ・プラマーのリディアが出てきて、それをバリーが追うといった件が展開し、もはやこの時点でバリーが過去に囚われて妄想過多の幻想狂人となったことのリアリティが減じ、すこぶる興冷めへの方向へと導いてしまっている。ゆえに本作には、儚さ、切なさ、哀れさといったドラマの旨味が足りないのだ。ホーリー・グレイドルがモチーフになっているところはギリアムの作家性が垣間見えて意義が生まれもするのだが、この監督、やはり人間への視点が甘いためドラマが描けない。ロビン・ウイリアムズのイチモツだけが印象に残る作品である。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ぽんしゅう[*] けにろん[*]

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