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[コメント] 秋菊の物語(1992/中国=香港)

法と情。
煽尼采

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







政府の一人っ子政策で子どもが作れなくて憤懣やるかたない村長による玉蹴り事件が発端となるこの物語、結局は秋菊の出産騒動で村長が一肌脱いだ事により二人の感情的な諍いは円満解決。なのにそれまで法的手続が遅々として進まなかった裁判所の決定により、村長退場。「ワケ、分からん・・・」と呆然と佇む秋菊。

小さな共同体で暮らす人間同士、感情的な行き違いはあったものの、やはりいざという時に頼りになるのはご近所さん。が、なまじ法律などというものがあるせいで、当事者両人の思いとは別に、抽象的なシステムだけが何だか自動的に二人を巻き込みながら進行していく。この齟齬が生む悲喜劇。思えば、政府による一人っ子政策が無ければ、村長がキレて事件を起こす事も無かった筈。ラスト・ショットでの秋菊のあの表情は、開発の進む中国の、今も伝えられる都会と農村のギャップが生む疑問と不安を凝縮させた表情なのかも知れない。そう考えると、最初はコメディ・タッチで撮ろうとしていたのをドキュメンタリー風に変えたというのも尤もな話。

にしても、コン・リーの芋臭い田舎女への変身ぶりは凄いな。..なんて言い方がまた都会人の驕りなんでしょうか。外見に対する意識がここまで人の印象を変えるんだという事が、映画の内容とはまた別に、印象的だった。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)寒山拾得 りかちゅ[*] tredair ぽんしゅう[*]

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