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[コメント] 無情の世界(2022/日)

三話構成のオムニバス。私の好みであえて云えば、三話目、二話目、一話目の順番になる。尻上がりに良くなるということになるが、一方、一話目の唐田えりかを主人公にして、佐向大に長編を撮ってほしいとも思う。
ゑぎ

◎一話目:「真夜中のキッス」

 確かに唐田の顔面と身体性の魅力は捨てがたいが、もっと決定的な悪の瞬間が見たいと思ってしまった。例えば本作で切り取られたプロットの前段の顛末だとか。唐田の服は血だらけだったが、相棒の栄信はほとんど手に血が付いてるぐらいだったように思う。あるいは、叙々苑へ行った後にも悪事を働くのは必定だろう。それも見てみたい。また、もう一人の重要人物、ファミレスにたまたま居合わせた客で、自分は3人経験ある、と云う白木みのるみたいな、やす子みたいな男−新名基浩。この人が私にはダメだった。それは、演者の問題ではなく、キャスティングとディレクションの問題だろう。新名は、『夜を走る』の謎の中国人(?)役の方が断然面白かっただけに、より失望が大きい。タイトルを実装するキスシーンも演出はイマイチだろう。あと、小野莉奈が唐突に歌を唄うのは良かった。ちょっと音痴なのもいい。

◎二話目「イミテーションヤクザ」

 これはほとんど固定ショットでできており、三作の中では、画面造型という意味での演出スタイルは一番好みだ。また、ビルの屋上と、オーディションが行われる(反社の事務所も入っている)ビル内だけというミニマルな舞台構成であることも、決して寂しさを感じさせず、必要十分なシーンが凝縮して提示されているように感じさせるところが上手いと思う。ただし、ヤクザがVシネマ愛好者だったという展開はありきたりか。原案と脚本にも参加した主演者−渡部龍平は、今後が楽しみだ。

◎三話目「あなたと私の二人だけの世界」

 開巻は東京(?)の街並みの空撮ショット。ドローンだろうか。これが綺麗なショットでびっくりした。しかし、人物を撮った部分はほとんど手持ちだ。私の好みということで云えばキライなスタイル。だが、まずは、女性専用の護身術講座と、男性専用の恋愛講座が時間貸しスペースで入れ替わる、という設定が良く、男は性欲のバケモノと思っている真面目な女性−白石優愛と、3年恋愛高座に通い続けているという奥手の青年−大友律の物語にプロットが収斂するかと思わせておいて、何とも意外なかたちで、タイトルを実装してしまうという構成が頭抜けていると思った。これがまた、こんなエピローグが待っていようとは、というものだ。日本の警察なんてガバガバ、みたいなことを云うのも怖い。尚、恋愛講座の講師−内田慈と卒業生−渋江譲二は、バブル期イメージで作り過ぎと思う。真面目な白石が提案した鳩尾への正拳を受ける榎本コーチ−菊田倫行のシーンが好き。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ぽんしゅう[*]

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