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[コメント] 在りし日の歌(2019/中国)

高台からの風景がいい。開巻の、ため池を見渡せる土手の上。ラストの、大きな霊園を望む、小高い山の上の墓地。これらは、オープニングとエンディングで綺麗に呼応し、人物を客観視する俯瞰を生む。
ゑぎ

 中盤の、港町の工場も海側から少し高い場所に立っており、こゝから海側への眺めも、やゝ俯瞰のカットになり、例えば、養子のシンシンを見つめる厳しいロングショットが生まれる。

 本作は3時間を超える長尺だが、全く緊張途切れることなく見た。少し冗長かと思う部分はあったけれど、すぐに時間の使い方に感動し必要性を納得してしまうのだ。例えば、後半で昔の住処を訪れるシーンなんかも、最初は、このシーン必要か?と思いながら見たのだが、すぐに、この場所に彼らを導く意味が分かる、というように。

 また、全編に亘ってほとんど科白で説明をしない画面造型が見事だが、ラストに向かってプロットを収斂させていく構築力にも舌を巻く。幼いハオハオがずっと胸にしまい込み、苦しんできた思いの結末。そして、ハオハオの子供(赤ちゃん)披露の会で、テレビ電話によって知らされる事実。さらに、養子のシンシンのエピソードまで加えるのは、ちょっと、やり過ぎだろうと思ったぐらいだ。

 とは云え、実を云うと、ワタクシ的には中盤の養子・シンシンとのやりとりのシーンが一番心に響いた部分なのだ。別離の際の母(養母)への挨拶!徹底して科白で語らせない演出が素晴らしい。傑作。

#実は終盤は泣きっぱなしになってしまい、マスク一枚ぐしょぐしょにしてしまった。予備を持っていて良かった。

#前半のダンスシーンもとてもいいことを明記しよう。モーリーと2人で踊るフルショットも良いですが、幼きシンシンとハオハオを肩車して皆で輪になって踊る場面なんかは、ヴィスコンティやベルトルッチのダンスシーンを思い出しました。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)袋のうさぎ セント[*]

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