森繁久彌と市原悦子の掛け合いが実にいい雰囲気で、例えばスリの親分・西村晃から送られた金(60万円)を数えながら２人で話をするシーンの間合いと台詞回しなんか絶品だ。

　腹水を妊娠と錯覚したまま死んでしまう無縁のオカマ（穂積隆信がやっている！）の骨箱に「浅草様」と書かれているブラックユーモアや、ラスト近くの女湯での刃傷沙汰等デタラメなエネルギー溢れる演出も垣間見られるが、しかし、米倉斉加年（好演！）の醸し出す雰囲気や西村晃の落ち着いた演技もあり、破壊力というよりは力みのない演出が横溢している。露骨な艶笑譚のようでいて、夏純子や岡本茉莉に対しても、瞳麗子や中川加奈ら踊り子達に対しても演出は猥雑というよりはお行儀のいいものだ。そういう意味で、森崎東作品としては少々物足りなさを感じてしまうが、しかし、ラストカットが繁華街を歩く岡本茉莉というのが嬉しいねえ。タイトルロールは岡本茉莉だったんだ！