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[コメント] 真珠の耳飾りの少女(2003/英=ルクセンブルク)

駄目メロドラマ
Kavalier

フェルメールの家人が誰も、彼のその絵画の芸術性を理解しえなく、文字すら読むことができない下働きの少女がその理解者となりえた。こういった設定を使用しての少女とフェルメールの交流、少女をモデルとした絵画の製作過程が描かれていく序盤を見た時は、相当に期待したわけなんだが、中盤以降はひたすら通俗的なメロドラマが紡がれていき、技術的であれ観念的であれ"絵画"に関した描写はほぼ後半は登場しない。

フェルメールがカメラ・オブ・スクーラをどのように使用して絵を描いたのか、絵具をどのように使ったのか、こういった要素が恐ろしいまでに表面的な表現に留まっているのには多大に失望した。

冒頭に提示された登場人物の造形が、物語のインタラクションを経過してもまったく変化も交流しえない。"嫉妬深い妻"は最後まで"嫉妬深い妻"、"理性的な義母"もラストに至っても"理性的な義母"、"悪意を持つ少女"も終幕まで"悪意を持つ少女"であり続ける。さして作品全体に効果を挙げていないヒロインと肉屋の息子とのロマンスの挿話といい、下品な音楽の使用、中盤以降の徹底した通俗っぷりには腐臭すら感じ、鑑賞し続けるのが苦痛だった。

思うに、昨今の細分化したマーケティングの結果作られているある種の層の為の映画なんだろう。例えば『トスカーナの休日』『ヤァヤァ・シスターズの聖なる秘密』みたいな作品だな、これは。 そう考えれば、ここで描かれる、絵画も狭いセットの中での中世ヨーロッパの描写もメロドラマを描くための単なる雰囲気作りの道具でしかないわけだ。

(評価:★2)

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このコメントを気に入った人達 (6 人)ぱん[*] Orpheus ボイス母[*] 水那岐[*] 町田[*] tredair

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