[コメント] 大地の子守歌(1976/日)
僅かに三年にして、濃密な何十年かの年月を生きてしまったようなおりん。野の花のように目を引くが、手折ろうとする者全てを傷つけずにはおかない娘は、原田美枝子の存在を得て初めて息を吹き込まれた。
まだ力任せの演技しかできないが、原田のエネルギーはこの年にして恐るべきものがある。折檻を受けたり、自ら喧嘩を買って出た時のわざとらしいまでに付着した血糊も、この娘につくことで過剰さを減じられ、リアリティすら得る。
いわば彼女は、塗りたくられるのを待っているキャンヴァスなのだ。そして勿論、どんなに塗りたくっても下から存在感がどうしようもなく浮き上がってくる。
増村監督からしても、この素材を充分に使いこなす機会を得られなかったことは、随分残念だったのではあるまいか。
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